AGILE COACHING ETHICS

AGILE ALLIANCEの定めるアジャイルコーチング倫理規範

本規範は有志によって作成されたもので、アジャイルコーチングのための倫理規範と倫理シナリオから構成されます。倫理シナリオは 、読者が直面するであろうジレンマを分類し、さまざまな文脈における倫理的行動の例を示すことを目的としています。

アジャイルコーチングのための倫理規範

アジャイルコーチングの実践者には倫理的な振る舞いが求められます。実際のところ、それはどういうことなのでしょうか。

 

本倫理規範(以下、規範)はアジャイルコーチングに取り組んでいる方々に助言を提供し、期待されている振る舞い、助言、アプローチの種類について指針を示すものです。

アジャイルコーチングは個人、チーム、システミックコーチング、ファシリテーション、ティーチング、メンタリングといった数多くの分野を包括した、進化し続ける実践そのものです。それらすべての知見はクライアントのニーズをアジャイルなアプローチで取り扱うために駆使されます。

アジャイルコーチングは複雑なので、困難に感じる状況を経験するのは当然のことです。規範は、皆さんがそうした状況の中で下さざるを得ない決断や、クライアントのための難しい決断の後押しになることでしょう。

規範を受け入れたら、困難な決断を迫られる場合でも倫理的に行動するよう努めます。たとえ個人的にマイナスの影響があるとしても、勇敢に行動します。

本規範の署名者はさまざまな文化、世代から参加しており、さまざまなグループに属しています。私たちは、違いを脇に置き、より良い方法を追求するためにお互いを高め合うことで、この運動の力が増幅されると信じています。私たちは、困難な決断や勇気ある対話において、お互いをサポートすることにコミットします。

規範

Agile Coaching Ethics
 

アジャイルコーチングを倫理的に実践する者として、私は以下のことにコミットします。

1. 機密、知的財産、情報セキュリティの保護

  • 私は共有された情報を保護し、法的な理由がある場合、またはクライアントやステークホルダーと明確な合意がある場合にのみ情報を開示します。
  • 私は他人のアイデアを適切に引用し、それが自分のものであるという印象を与えません。

2. 自分の能力の範囲内での行動

  • 私は自分のスキル、経験、資格についてオープンかつ透明に伝えます。
  • 顧客や関係者から私の能力を超える要求があった場合には、その旨を明確に伝えます。
  • 別の形での専門的な支援が必要だと判断した場合は、クライアントに率直に伝えます。

3. 内省と継続的な研鑽

  • 私は、アジャイルコーチングの活動における倫理的およびその他の課題を探求するために、同業のグループまたはメンターと関わります。
  • 私は内省と専門能力の研鑽を通じて自己認識と効果を向上させるよう努めます。

4. 利益相反の回避

  • 影響を受ける可能性のあるすべての人に対して、潜在的な利益相反について透明性を保ちます。
  • 私は、専門的な判断力と客観的な思考力を維持するために、クライアントやステークホルダーに不利益をもたらして私自身が利益を得るような状況を意識的に避けます。
  • 私は、クライアントやステークホルダーと協力して利益相反を解消し、必要に応じて支援を求め、必要に応じて関係を中断または終了します。

5. 関係性における価値の確保

  • 私はクライアントやステークホルダーと、関係が価値あるものであること、そして相互の合意によってのみ拡大されることを確認します。
  • クライアントが私の支援に依存している場合はそれを透明化し、クライアント自身で自走できるアジリティに向けて取り組みます。
  • 関係の価値が低下していると判断した場合は、クライアントに率直に伝えます。

6. 社会的責任、多様性、包摂性の維持

  • 私は会話にさまざまな声を持ち込む機会をうかがいます。
  • 私はあらゆる形態の差別を防止し、排除するために行動します。
  • 私は自分の行動によって、あるいは不作為によって、自分が出会ったときよりも良い社会を残せるよう努力します。

7. 境界についての合意

  • たとえそれが拡大したとしても、双方で合意された範囲を保持します。
  • 私はクライアントと協力してそのニーズを理解し、私の個人的な好みや希望に基づいた解決策を押し付けません。
  • クライアントがアジャイルソフトウェア開発宣言の価値や原則に反する目的を追求している場合、私は公然と異議を唱えます。

8. 地位と権力の分離

  • 私は、自分の地位、権力、影響力を利用して個人的な利益を得たり、クライアントの目標を損なったりしません。
  • 権力、特権、地位がクライアントの目標や、支援に関する私の能力を妨げている場合、その気づきを提供します。

9. 職業に対する責任

  • 私は、アジャイルコーチングを実践する他の人々に、各分野における標準と本規範を採用するよう呼びかけます。
  • 私はアジャイルコーチングという職業の評判を高め、向上させます。
  • 他人の非倫理的な行為に遭遇したときは、健全な対話と内省を促します。

謝辞

コーチング、ファシリテーション、およびアジャイル コーチングの実践に含まれるその他の分野に関する倫理規範はすでに存在しています。本規範を作成するにあたり、私たちは既存の規範や、長年にわたりアジャイル コーチングの倫理に関する議論に貢献してきた多くの人々の活動に影響されてきました。

本規範は、関連する倫理シナリオにおける補足説明によって補完されています。

詳細については、Agile Allianceの Web サイトをご覧ください。https://www.agilealliance.org/resources/initiatives/agile-coaching-ethics/

Version 2.0 March 2022

This material is released under the Creative Commons, Attribution, Share Alike 4.0 license

 

アジャイルコーチングの倫理シナリオ

 

本ドキュメントは、アジャイル コーチングの倫理規範(以下、規範) の考え方について補足情報を提供するものです。

倫理シナリオの目的は、読者が直面するであろうジレンマを分類し、さまざまな状況での適切な、あるいは不適切な倫理的行動の例を示すことです。本シナリオは、アジャイルコーチングに取り組んでいる、個人、チーム、組織とともに活動する方々に助言を提供し、期待されている振る舞い、助言、アプローチの種類について指針を示すものです。

以下に挙げるシナリオは、社内アジャイル コーチ、外部アジャイル コーチ、および別の役割の一部としてアジャイル コーチングを実践している人々 (たとえば、アジャイルコーチでもあることが期待されている組織のマネージャー、アジャイルコーチングの一部または全ての側面を担うスクラムマスター。) に適用されます。シナリオは、以下に示すようなジレンマに直面したときに、適切な、あるいは不適切な倫理的行動の例を示し、考え方を導くことを目的としています。

アジャイルコーチングに取り組む人々が直面する課題の包括的なリストとしては十分な数があるわけではなく、コミュニティからのフィードバックをもとにシナリオが更新されます。メールでお気軽にご自身のストーリーや事例を共有してください。

Scenarios

シナリオ

1 機密、知的財産、情報セキュリティの保護

  • 私は共有された情報を保護し、法的な理由がある場合、またはクライアントやステークホルダーと明確な合意がある場合にのみ情報を開示します。
  • 私は他人のアイデアを適切に引用し、それが自分のものであるという印象を与えません。

適切な事例

あなたはいくつかのビジネス領域におけるアジャイルの健全性を評価するよう依頼されます。あなたは機密レベルを設定し、結果を匿名化することを伝えたうえでインタビューにのぞみます。評価実施後、CxO は各個人の結果を含むレポートを要求してきましたが、あなたはインタビュー対象の個人の身元を保護するために、匿名化されたデータを提供します。

適切である理由: 事前に公開範囲を合意した情報が報告されています

不適切な事例

あなたは、コーチをしているチームの中で、成績が芳しくないメンバーの情報について報告するよう求められました。 あなたは、チームの許可なく情報を提供することに同意します。

不適切である理由:あなたがクライアントの知らないところで情報を共有しています。

グレーゾーンの事例

あなたはある個人を一定期間コーチングしてきました。コーチングの中で繰り返し対話の機会を持ってきました。ある時、支援先企業のセキュリティ担当者が、あなたのクライアントが企業ポリシーに違反したと、声をかけてきました。あなたは、クライアントがセッションの中で話した、その可能性がある行動に関する会話を思い出します。ただし、あなたはポリシーについて熟知してません。また、コーチングの契約には、企業ポリシーへ従うことについての記載はありません。熟慮の末、あなたはセキュリティ担当者へクライアントとした会話の内容を共有します。

グレーゾーンである理由: あなたには、クライアント(クライアント企業に属する個人を含む)が共有するすべての情報を保護する義務があり、契約、または法的にそうする義務がある場合にのみ情報を開示する必要があります。この事例において契約には、企業ポリシー違反やその報告に関する記載がないため、情報を共有する前に、自分の行動が倫理的にどのような影響を与えるかを慎重に検討する必要があります。

決断するにあたり、参考になる行動

  • 顧問弁護士を探すことも考慮に入れて、法律上の問題を検討する
  • 情報を共有する必要があることを、クライアントに伝え、強要することなく許可を得る
  • 組織と契約している自分の役割と、それによってもたらされるその他の義務(例えば、会社に雇用されている管理職である場合、または外部契約者である場合)といった立場の文脈を踏まえて検討する
  • 同僚にアドバイスを求められないか検討する

2. 自分の能力の範囲内での行動

  • 私は自分のスキル、経験、資格についてオープンかつ透明に伝えます。
  • 顧客や関係者から私の能力を超える要求があった場合には、その旨を明確に伝えます。
  • 別の形での専門的な支援が必要だと判断した場合は、クライアントに率直に伝えます。

適切な事例

クライアントが、あなたは使ったことのないツールを使いたいというニーズを持っていると知りました。あなたはその事実を伝え、二人で一緒にその使い方を学ぶというパートナーシップを結びたいか尋ねます。クライアントは、このツールの使い方を共同で探求することに同意します。

適切な事例

同じような状況において、あなたが紹介できる別のコーチに手伝ってもらうことを望むかどうか尋ね、その手配を手伝います。クライアントは、他のコーチを受け入れることに同意します。

適切である理由:あなたは、クライアントがあなたに実務経験がないことを知らせたうえで、クライアントがあなたと仕事をすることを選択しました。

2つ目の事例では、追加のサポートを入れることにクライアントが選択しました。

適切な事例

採用担当が面接中に、あなたの現在の組織(面接中の企業の競合企業)がアジャイルトランスフォーメーションにどのようなアプローチをし、どのような成果を上げているかを尋ねます。また、現在競合の方が市場で優位に立っているため、入社後はあなたにも同じようなアプローチをとってほしいとほのめかしてきました。あなたは、これらは企業秘密とみなされ、使用した戦略を明かすことはできないと伝えます。マネージャーは執拗に答えを迫り、ついにそれがあなたを雇用する主な理由だと言いました。あなたは面接を終了することにしました。

適切である理由:あるクライアントの内部情報を他のクライアントに開示すると、守秘義務違反が発生します。

不適切な事例

クライアント候補が、特定のトピックに関する豊富な実務経験を持つ人材を求めています。あなたは、仕事を獲得するために、理論的な知識を実務経験として誇張してアピールします。

不適切である理由:あなたは、持っていない能力を持っていると主張しました。

不適切な事例

レトロスペクティブ中にチームがダイナミクスをよりよく理解できるようにするために、あなたは、自分が経験しているが専門的な資格を持っていない他の分野のツールやテクニックを活用し、チームメンバーが潜在的な恐怖やニーズを明らかにするように促します。あなたは、自分が何をしているのか理解していると漠然と保証します。

不適切である理由:専門的な資格のないツールやテクニックを利用すると、薬ではなく毒になり得ます。専門的な資格のないままにする保証は詐称に当たります。

3. 内省と継続的な研鑽

  • 私は、アジャイルコーチングの活動における倫理的およびその他の課題を探求するために、同業のグループまたはメンターと関わります。
  • 私は内省と専門能力の研鑽を通じて自己認識と効果を向上させるよう努めます。

適切な事例

組織内で毎月1回、3人1組のグループに分かれ、各自が経験している倫理的な課題について話し合ったり、コーチングの仕事におけるその他の課題を通してお互いをサポートしたりしています。このグループでの話し合いの内容は秘密にされます。参加するコーチからコーチングを受けるすべての人は、このグループの反省会が行われることを承知しています。

適切である理由:このミーティングにより、本規範を遵守しつつ、クライアントの秘密を守ることのできる同僚と一緒に、課題を探求するための安全な場が提供されます。

適切な事例(メンター)

あなたは社内の相互扶助セッションに価値を感じています。しかし最近、よりデリケートな課題が浮き彫りになってきました。あなたは、倫理を守っているかどうかを確認し、状況にどのようにアプローチするかについて新しいアイデアを思いつくため、この課題を社外のメンターに相談することにしました。

適切である理由: 社内の相互レビューは、組織のコンテクストを知る貴重な場です。しかし時には、状況へのアプローチ方法について偏った見方(フィッシュボウル効果*とは:まるで金魚鉢の中にいるように、自分の行動が周囲から常に観察されているように感じる心理的な状態や状況を指します。)が生じたり、特定のトピックについて安心して話すことができなかったりすることもあります。外部のメンターは、そのような課題に新鮮な視点をもたらしてくれる可能性があります。

不適切な事例(メンタリング/相互扶助)

チームメンバーのメンタルヘルスが心配で、(a) チームを安全に保つためにコーチングを調整するべきか、(b) チームメンバーや組織内の誰かに心配事を打ち明けるべきか、迷っています。 相互扶助グループやメンターは利用できないものとします。

不適切である理由:倫理的に困難なジレンマを抱えているが、あなたには自分で解決するスキルや経験がない状況です。相互扶助グループやメンターを利用できないため、守秘義務に違反することなくアドバイスやサポートを受ける方法がありません。

適切な事例(継続的な能力開発)

毎年、さまざまな会議、ワークショップ、研修に参加します。ピアリフレクションを通じて自分の経験や学びを分かち合います。

適切である理由: 経験豊富なコーチでも、常に最新の技術や知識を身につけ、関連分野の理解を深めることの重要性を認識しています。

不適切な事例(継続的な能力開発)

あなたは長年チームと関わっており、ある分野における第一人者だと思われています。 あなたは時々カンファレンスに登壇したり、経験の浅いコーチのためにトレーニングセッションを開いたりしていますが、自分自身がワークショップやトレーニングに参加することに価値を感じていません。

不適切である理由:アジャイルコーチングは進化しつづける専門職であり、特に他の人をトレーニングしたり指導したりするときには、最新のアイデアやアプローチを提供することを保証する倫理的義務がコーチにはあります。

不適切な事例(コミュニティサポート)

あなたはアジャイルイベントで知識を共有するよう招待された。あなたは、参加者全員が未熟か理解できないかのどちらかであるため、あなたの学習を受けるに値しないと述べて断ります。

不適切である理由:アジャイルコーチは他のコーチから学び、コミュニティ全体を発展させることが期待されています。

グレーゾーン事例から不適切事例への移行

あなたは、自分と同じような考えやバイアスを持つ同業者グループをあえて選びます。やがてあなたは、グループにおける自分の地位が、個人的かつ市場的なパワー(例えば、自社サービスの顧客を囲い込む能力など)をもたらすことを認識しますが、そのグループを唯一の支えとして使い続ける。

不適切である(その可能性がある)理由:グループから個人的な利益を得ていることに本人が気づいていない場合はグレーゾーンです。 グループがもはや相互扶助を提供するものではなく、個人的な利益を得るためのものであることを認識すると、不適切となります。多様性を加えたり、相互扶助を受ける新しい方法を見つけたりして、本来の目的を果たすためにグループを変更する措置をとるべきです。

4. 利益相反の回避

  • 影響を受ける可能性のあるすべての人に対して、潜在的な利益相反について透明性を保ちます。
  • 私は、専門的な判断力と客観的な思考力を維持するために、クライアントやステークホルダーに不利益をもたらして私自身が利益を得るような状況を意識的に避けます。
  • 私は、クライアントやステークホルダーと協力して利益相反を解消し、必要に応じて支援を求め、必要に応じて関係を中断または終了します。

適切な事例

あなたはある製品の利害関係者です。チームと一緒に仕事をするうちに、あなたは自分の製品が彼らのニーズを満たせることを発見します。あなたは、自分がその製品に利害関係があることを明確にし、その製品を選択する意思決定プロセスから外れます。

適切である理由: あなたは利害関係の対立を明示し、意思決定プロセスに影響を与えません。

適切な事例

組織内でコーチングをしているうちに、あなたはパートナーの一社で働くリーダーと親交を深めます。あなたに個人的なリーダーシップコーチになってほしいと依頼されます。雇用契約書と競業禁止規定を確認した後、あなたは、アジャイルやあなたの会社の直接の事業とは関係のない範囲でサービスを提供できることを確認しました。上司にあなたの意思を伝え、契約が問題ないことを確認します。上司はあなたの決断を支持してくれました。その結果、あなたはその人とプロフェッショナルコーチングの関係を築くことになります。

適切である理由: 時間をかけて雇用契約に違反していないことを確認し、直属の上司と透明性を確保した上で、その人物をクライアントとして迎えました。

適切な事例

コーチングの中で、クライアントは今後の契約に影響を与える可能性のある予算や料金に関する情報をあなたに伝えます。あなたは、将来あなたの契約交渉に影響を与えるような、利益相反になりかねない情報を知ってしまったことを理解してもらい、契約を続けてほしいかどうかを尋ねます。

適切である理由:潜在的な利益相反が生じる可能性があることについて、クライアントに透明性をもって説明しました。

不適切な事例

クライアントが、ある外部製品の評価を求めています。あなたは、競合製品の1つに自分が利害関係者として関わっていることを開示せず、その製品を選択するよう意思決定プロセスにおいて便宜を図りました。

不適切である理由:あなたは自分の利益のために影響力を行使し、競合製品への関与を公表しませんでした。

不適切な事例

アジャイルコーチとして関わりながら、ツールの技術的な販売代理店としての関係を公表せず、クライアントにそのツールの使用や購入を強く勧めました。

不適切である理由:クライアントとの関係を明らかにすることなく、自分自身や自分の組織のために金銭的利益を生み出しています。

不適切な事例

あなたはコーチ契約の更新に積極的に取り組んでおり、あなたの契約を更新するかどうかを決定する人物が、好きなスポーツチームの決勝戦にどうしても行きたいと考えていることを知っています。あなたはチケットを購入し、その人物を招待しました。

不適切である理由:互恵関係を確立することで、意思決定プロセスに影響を与えようとしています。

グレーゾーンの事例

あなたはクライアント企業の採用担当者にコーチングをしています。コーチングセッションの後、クライアントから他にコーチがいないか尋ねられ、あなたは同僚を紹介しました。

グレーゾーンである理由:あなたがその人たちの資質をよく知っているかどうか、あるいはあなたがそのクライアントに同僚を紹介することがインセンティブになるかどうかがわからなければ、グレーゾーンになります。

グレーゾーンの事例

あなたは、あるクライアントにアジャイルコーチングサービスを提供するために、大手コンサルティング会社と契約しています。あなたのコストが高いことを理由に、今月末で契約を打ち切ると通知されました。最終日の前に、あなたはクライアントに、将来あなたのサービスを利用したい場合には、仲介を介さず利用できることを伝えました。あなたはその理由を告げず、それ以上の勧誘もしませんでした。

グレーゾーンである理由:コンサルティング会社と顧客の間であなたの雇用状態や条件について、いつ、どのような内容が話し合われたのかが不明確なため、あなたの伝えたことが現地の法律や雇用契約違反になるかはグレーゾーンとなります。

5. 関係性における価値の確保

  • 私はクライアントやステークホルダーと、関係が価値あるものであること、そして相互の合意によってのみ拡大されることを確認します。
  • クライアントが私の支援に依存している場合はそれを透明化し、クライアント自身で自走できるアジリティに向けて取り組みます。
  • 関係の価値が低下していると判断した場合は、クライアントに率直に伝えます。

適切な事例

あなたはコーチング契約がもはや価値を生んでいないことに気づきました。あなたは、スポンサーやチームと率直にその問題について話し合い、全ての当事者に価値がもたらされるよう、コーチング契約を調整することに同意しました。

適切である理由: アジャイルコーチは、価値が低下していることを組織に伝え、オープンな議論を促しました。合意が得られない場合、あなたは社内の役割の変更を検討するか、組織を去る必要があります。

適切な事例

あなたが一緒に働いていたチームは、合意した成果を達成しました。あなたはこの達成をスポンサーとチームに知らせます。

適切である理由: アジャイルコーチの義務は、合意された目標が達成されたことを示すことであり、チーム全員が到達したいと思う新たな目標がある場合にのみコーチング契約は延長されます。

不適切な事例

ある仕事を始めて3カ月が経った頃、あなたはチームが約束したようなリーダーからのサポートを受けていないことに気づきます。あなたは、このサポートがなければチームは目標を達成できないのではないかと思っています。あなたは自分の仕事にしがみつくため、このことをチームや経営陣に伝えようとしませんでした。

不適切である理由:アジャイルコーチの義務は、価値の低下を組織に知らせ、適切な場面で、価値を向上させる別の方法を議論することです。

不適切な事例

あなたは、アジャイルライフサイクル管理ツールを導入するチームをコーチングし、サポートする仕事を任されています。あなたは、そのツールに関する深い技術的専門知識を持っています。コーチング契約の一部として、あなたは、メンタリングとコーチングを行いながら、チームが技術的な専門知識を学び、成長するのを支援することになっています。あなたは、チームをあなたの技術的専門知識に依存させることで、仕事を拡大する機会があると考えました。自分の目標を達成するために、あなたはわざとチームに力を与えないことを選びます。

不適切である理由:依存関係を作ることで、チームが自立し、自律することができなくなります。 もしチームに技術的な専門家が本当に必要なのであれば、あなたはその専門家として採用面接を受け、コーチの役割を放棄することもできます。

不適切な事例

契約上あなたの提供するコーチングは、チームメンバー間の対立を緩和するためのコーチングです。しかし、この契約のスポンサーは、特定のチームメンバーを解雇するケースを構築するのに役立つ情報を密かに収集するようあなたに依頼しました。

不適切である理由:あなたは組織における自分の本当の役割を積極的に隠し、チームの知らないところでチームの進捗状況や仕事について報告しています。

グレーゾーンの事例

企業買収が相次ぎ、グループが急速に拡大しているため、あなたは自分の役割がコーチング契約で合意した価値を提供できるかどうか確信が持てていません。役割の変化、新たな人材の加入や配置転換に伴う入れ替わりの多さから、必要なチームや経営陣の注目を集めることは不可能だと思っています。あなたは、コーチング契約を履行できるまでに環境が落ち着くかどうか、あと数カ月かけて見極めることにしました。

グレーゾーンである理由:可能な限り多くの価値を提供できていないことがわかってから、厳しい話をするのはグレーゾーンです。

6. 社会的責任、多様性、包摂性の維持

  • 私は会話にさまざまな声を持ち込む機会をうかがいます。
  • 私はあらゆる形態の差別を防止し、排除するために行動します。
  • 私は自分の行動によって、あるいは不作為によって、自分が出会ったときよりも良い社会を残せるよう努力します。

適切な事例

あなたがコーチングをしているチームで働いているとき、あるチームメンバーが他のチームメンバーの政治的信条について質問したときのやりとりを見かけました。その人は礼儀正しく会話に参加していたが、結局のところ、職場でその話題について話し合うことに不快感を抱いていることがわかりました。後日、あなたはそのチームメンバーと時間を見つけて、そのやりとりについて尋ねます。あなたは、チームのワーキングアグリーメントが尊重と安全を求めていることを思い出させます。会話を通じて、チームメンバーはその質問が引き起こしたかもしれない恐怖に気づき、次回のレトロスペクティブで話題にすることに同意します。あなたはまた、不快に思っていたチームメンバーを見つけ、その人とも話をします。チームの次回のレトロスペクティブでは、このトピックについてチームがどのように取り組んでいるかという具体的な質問を投げかけ、人々が共有できる場を作ります。

適切である理由:コーチの行動は、チームの前で個人を罵倒することはなく、チームがワーキングアグリーメントで合意された範囲内でその問題を取り扱うことを促します。

適切な事例

ある地域で数年間、トランスフォーメーション計画をテストし、実施した後、別の地域で同じトランスフォーメーション計画を展開しようとしました。あなたはすぐに、これまでうまくいっていた計画がうまくいっていないことに気づきます。あなたはチームと話し合い、何が展開に影響を及ぼしていると思うか尋ねました。 チームは文化的な課題をいくつか指摘したので、あなたは協力して、現地の常識に基づいて計画を適応させます。今後は、計画がどの地域でもうまくいくとは考えず、まず話し合いを持ち、そのグループの特定のニーズに合わせて計画をカスタマイズするようにしました。

適切である理由: 当初、コーチは、あるグループにとって有効なことは、他のすべてのグループにとっても有効であるという前提で指導していました。好奇心を持ち、耳を傾け、学ぶ時間を取ることで、コーチは文化的バイアスを克服し、チームが奉仕している人々に特化した方法を提供することができました。

適切な事例

あなたは新メンバーが加わったチームでコーチングをしています。その新メンバーは、1年半前にチームが発足して以来、初めての有色人種です。1週間ほどして、あなたはこの人がしばしば遮られるパターンに気づきます。また、チームのアイデアの多くはチームリーダーが選定しているため、メンバーの貢献が正当に評価されていないようです。コーチとして、あなたはチームリーダーに1対1でこの状況を説明します。リーダーは驚き、自分の行動を検証し、改めることに同意します。数週間後、チームリーダーはレトロスペクティブの際にもそのことを話題にすることを決め、チーム全体でお互いをもっと尊重し合うことについて深く話し合い、ワーキングアグリーメントを更新しました。

適切である理由: 無意識のうちに無礼な言動があることを認識し、対処しました。

適切な事例

コーチングしているチームメンバーが、あなたが不快に感じる言葉や口調を使いました。そのメンバーとの次の1on1で、あなたは自分の認識を共有し、前進するための計画に合意します。

適切である理由:ある人にとっては不快なことでも、別の人にとっては受け入れられるかもしれません。コーチとして、言葉がどのように受け取られるか、潜在的なバイアスが働いている可能性について意識を高めることは私たちの責任です。よりインクルーシブな職場環境を作るために協力することは私たちの義務です。

適切な事例

あなたはアジャイルコミュニティのメンバーです。何人かの参加者が、別のグループメンバーの問題に対するいわゆる古臭いアプローチに反対しています。あなたは最初、多数派グループの考えに同意しますが、中立の立場を保ちます。そしてグループが会話について振り返り、両方のアプローチから得た深い学びとともに、それが与えたかもしれない影響について考えるのを助けます。

適切である理由:あなたは、コミュニティが自分たちの意見に気づき、誰も間違えることなく、より広いナレッジベースから学ぶのを助けます。

不適切な事例

あるチームのコーチングをしているとき、あなたは、毎回スプリントプランニングを始める前に、チームの中心を保つ宗教的な儀礼から始めるというアイデアを紹介しました。チームはそのアイデアに不快感を示すことができないと感じ、それに従います。アイデアを実践すると、同じ信仰を共有していない何人かの人々を不快にさせましたが、彼らは心理的に安全を感じず、そのことを話題にしようとしません。

不適切である理由: 自分の信条を他人に押し付けることは、信条をともにしていない人々の自由な選択を侵害することになります。 この種の行為はまた、人と人との間に障壁を作り出し、コミュニケーショ ンを阻害することもあります。

不適切な事例

あるチームでのトレーニング中、グループの男性メンバーが、女性たちに「お嬢ちゃん」、「お節介ママ」、「おねーちゃん」といったあだ名をつけました。あなたは何も言わず、波風を立てないようにその行為を放置しました。

不適切である理由: 悪い行いをそのままにしておくと、それが強化され、継続されることになり、チームを傷つけることになります。

不適切な事例

あなたは、さまざまなレベルの経験を持つグループとセッションを進行しています。あなたは、より深い熟練度を持つ人たちを優先することを承知の上で、その人たちの声と興味を持つトピックの探求のために、より多くのスペースを設ける一方で、周縁的な声を切り捨てています。

不適切である理由: 自分たちの経験や知識レベルを共有する人たちに対して偏見を示し、奉仕するはずの他の人たちの声を排除しています。

グレーゾーンの事例

あなたはあるクライアントのために採用を手伝っているが、あるベンダーが女性の履歴書しか送ってこないことに気づきます。不思議に思ったあなたは、そのことを尋ねました。そのベンダーによると、あなたが募集している職務は通常パートタイムで、その職務に最適な候補者は女性だとのことです。当初、あなたは気分を害しましたが、そう言う代わりにもっと詳しく知ろうとしました。

グレーソーンである理由:コーチとしての私たちの役割は、一貫性のない行動を指摘することです。したがって、適切な行動は、ベンダーと1対1でフォローアップし、求人広告の文言、候補者の選出方法、面接の実施方法に潜在的な偏見が適用されていないことを確認することでしょう。潜在的な偏見が確認できれば、このシナリオは差別であり、ほとんどの国で法律に違反することになります。

7. 境界についての合意

  • たとえそれが拡大したとしても、双方で合意された範囲を保持します。
  • 私はクライアントと協力してそのニーズを理解し、私の個人的な好みや希望に基づいた解決策を押し付けません。
  • クライアントがアジャイルソフトウェア開発宣言の価値や原則に反する目的を追求している場合、私は公然と異議を唱えます。

適切な事例

コーチング契約書が、コーチの役割に関して過度に広範であり、コーチが誰と協働するべきか、また目的が何であるかが明確でないことが判明しました。この問題を解決するためにクライアントと話し合い、当事者間で契約書を見直し、修正することに合意します。

適切である理由:コーチはクライアントとともに、何が行われるかを理解し、合意しました。

適切な事例

あなたはある組織でアジャイルコーチとして働いています。経営陣は、事業の継続を確実にするために、人員を大幅に削減する必要性を認識し、すべての役割を再評価するアジャイル導入を発表しました。 人員削減がその一環であることは明確にされていません。尊敬と安全というアジャイルの価値観に基づき、あなたはこれに異議を唱え、全体的なコミュニケーションの一環として、人員削減とアジャイル導入の両方の背景を明確にし、伝えるよう経営陣を説得します。

適切である理由: コーチは個々人が自分の選択肢を理解できるよう、透明性を確保しようとしています。

適切な事例

あなたがアジャイルコーチとして働いているクライアント先では、あなたの都合や勤務時間に関して非現実的な期待をしています。あなたはこのことに気づき、契約書/ワーキングアグリーメントで労働時間/勤務スケジュールを明確にするよう提案します。

適切である理由: コーチング契約では、両者がお互いの境界線を明確に述べ、同意し、遵守することが推奨されます。

不適切な事例

コーチがその必要性がないにも関わらず、雇用された組織の下にない既存の契約に他のコーチを参加させることで、自分のビジネスを構築しようとしています。この場合、影響を受ける組織の許可を求めるのではなく、政治を通じて金銭的な利益や権力/影響力を得るために、不適切にアプローチを活用しています。

不適切である理由:コーチは権力の座を利用し、最大限の利益を得ようとしています。

不適切な事例

他の組織や企業と契約しているコーチとして、あなたは、自分に報酬を支払っている組織のために時間を割くのではなく、他の企業の提案依頼に対応するために、合意された勤務時間内に時間を割いています。

不適切である理由:コーチはクライアントから報酬を受け取り、そのクライアントのために特定のスケジュールで仕事をするのであって、他のいかなる契約があろうとも関係ありません。

不適切な事例

アジャイルコーチ/コンサルタントとして、あなたは、明確な終了日の定めなくあるいは、コーチング契約における合意された成功の尺度の定めなしに、意図的に、または意図せずに、クライアントのコーチングの必要性を人為的に延長している。したがって、線引きの欠如は、あなたとクライアントの間に長く続く、終わらせづらい関係を生み出すかもしれません。

不適切である理由:アジャイルコーチングの契約とその成果は、両者が進捗状況を確認でき、成果が十分に達成されたときに契約を終了できるように定義されるべきです。

8. 地位と権力の分離

  • 私は、自分の地位、権力、影響力を利用して個人的な利益を得たり、クライアントの目標を損なったりしません。
  • 権力、特権、地位がクライアントの目標や、支援に関する私の能力を妨げている場合、その気づきを提供します。

適切な事例

コーチが誰かをコーチングする中で、その関係がやがて個人的なものになり、親密な感情が芽生えます。その感情はコーチとクライアントの双方からあり、すぐに性的関係に発展する。コーチはコーチング関係を解消します。

適切である理由:中立的なコーチングのスタンスを保つためにコーチングの関係を解消しました。

適切な事例

もし利用すれば自分自身に金銭的な利益をもたらす可能性のある独占情報(合併など)をコーチが手に入れました。クライアントは、この種の情報が従業員以外でも入手可能であることに気づいていません。コーチは直ちにクライアントへ情報漏洩の事実を伝え、クライアントが情報漏洩を修正できるようにし、個人的な利益のために情報を使用しないようにします。

適切である理由: 私たちはクライアントの利益を第一に考え、リスクに気づく手助けをし、自分の利益のために情報を乱用しません。

不適切な事例

コーチが誰かをコーチングする中で、その関係がやがて個人的なものになり、親密な感情が芽生えます。その感情はコーチとクライアントの双方からあり、すぐに性的関係に発展する。コーチはクライアントとコーチングの関係を続けます。

不適切である理由:コーチが中立的なコーチングのスタンスでこのようなクライアントと接することは不可能です。

不適切な事例

コーチは、一緒に働いているスクラムマスターのパフォーマンスが芳しくなく、別の役割の方が向いているのではないかと感じています。コーチは、他のキャリアパスの可能性を提起し始め、成功するスクラムマスターに成長させるのは難しすぎると感じさせ、自分から他の選択をするように促します。

不適切である理由:誰かが選んだ道から「自己選択」することを勧めるのは不適切です。より適切な行動は、その人にとってより成功しやすいメンターやコーチを見つける手助けをすることです。

グレーゾーンの事例

ある企業でコンサルティングをしているコーチが、その企業の求人があることを知り、自分の影響力を使って採用責任者に働きかけ、友人が仕事に就けるように手助けをします。

グレーゾーンである理由:求人情報を友人と共有するのは構いませんが、コーチが採用プロセスに影響力を行使するのは不適切です。

9. 職業に対する責任

  • 私は、アジャイルコーチングを実践する他の人々に、各分野における標準と本規範を採用するよう呼びかけます。
  • 私はアジャイルコーチングという職業の評判を高め、向上させます。
  • 他人の非倫理的な行為に遭遇したときは、健全な対話と内省を促します。

適切な事例

あなたは、ある会議の場で、他のアジャイルコーチがマネージャーに対してチームのパフォーマンスを誤って説明しているのを目にしています。あなたはその誤った表現に異議を唱え、マネージャがバランスのとれた視点を得られるように、その意見の根拠となる証拠を求めます。

適切である理由: あなたは、非倫理的な行為である虚偽表現に異議を唱えています。

不適切な事例

あなたは他のコーチから学んだテクニックを使ってワークショップをデザインしました。 あなたはそのアイデアをどこから得たかを明らかにせず、自分自身でそのアイデアを思いついたかのようにほのめかします。

不適切である理由: アイデアに著作権や明確な保護がない場合でも、アイデアの出典を明らかにすることが求められます。

不適切な事例

あるアジャイルコーチが、アジャイルマニフェストにある原則「シンプルさ(ムダなく作れる量を最大限にすること)が本質です。」の必要性を意図的に否定するようなワークショップを作りました。ワークショップでこの文について質問されると、コーチは証拠もそれ以上の議論もなく、この原則が間違っていることを挙げます。

不適切である理由: アジャイルコーチとして、原則を実践し、他の人が原則を採用するのを支援することは、あなたの義務です。この原則に公然と異を唱える行動は、アジャイルコーチとしての義務を少しも果たしていません。この原則について議論することを拒否することは、あなたが他の人よりも多くのことを知っているように見せかけるばかりか、コーチングの考え方に反します。

CONTRIBUTORS

Hiroyuki Hanai
Yuhei Kikuchi
Satoka Chibana
Toshiharu Akimoto
Kensuke Ymaguchi

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